わたしは、約1年ほど介護士をしていました。
メンタルが少し病んでいたので、お店に立つより良いかなぁと割と軽めな気持ちというか自分のリハビリにもなるかなぁと思い、就きました。
介護のお仕事は思っているより楽しく、利用者さんとも良好な関係が築けていました。
辞めた理由はヘルニアです。
当時はまだ離婚していなかったので、旦那さんからの
「稼いだ金が医療費になる!」と言われて、辞める決心をしました。
介護はとても素晴らしい職業です。
誰に聞いても「感謝と尊敬」と言われます。
いま介護職をしている方、職場を良くするためにも初心に返って考えて欲しいことがあります。
わたしの経験した介護職とその職場のことを少しお話しますね。
介護士は究極の接客業
わたしが配属されたのは、特別養護老人ホーム(特養)。
5階建ての施設で、1回は受付や事務所・デイサービス。
2階~5階は老人ホーム。利用者さんが実際にそこで生活されています。
わたしのフロアは、軽度から重度の利用者さんが20名いらっしゃいました。
痴呆症の軽度から重度と思ってください。
他のフロアは軽度ばかりの方、寝たきりの方ばかりと比較的近い症状の方がいらっしゃいましたが、わたしの就いたフロアは少し症状に差がある方ばかりなので、大変でした。
軽度の利用者さんは、普通に会話もでき歩行も食事も特に不自由もなく生活できる利用者さん。
重度は寝たきりで意思疎通も難しい利用者さんでした。
まったく介護のお仕事をしたことのないド素人のわたしでしたが、利用者さんはみなさんとても優しく、わたしにとって良い心のリハビリとなりました。
研修や講義・会議などにも参加させてもらえ、たくさん勉強もさせていただきました。
ただ…スタッフ間で陰口が凄いことに、正直引きました。
同僚の悪口も多いですが、利用者さんの悪口も酷くて聞きたくなかったです。
業務中の態度や利用者さんへの言葉にも出てしまっているスタッフもいました。
なので、そのスタッフとのシフトは楽しい介護のお仕事の中では、とても辛かったです。
利用者さんは普段、とても気さくで優しくて。
確かに同じ話を何度もされますが、それだけ思い出深いものなのだろうと思い、同じ話でも何度も聞きました。
そういう話をされる時って、自然な笑顔なんですよね!
その笑顔がこちらにも伝わるので、楽しくお話を聞けました。
このお仕事をずっと続けられたらいいなぁと、いつも思っていました。
「気づき」の大切さ
楽しいことばかりが介護の現場ではないです。
わたしのいるフロアは重度の利用者さんもいらっしゃったので、昨日は晩ご飯も頑張って食べていた利用者さんが翌日にはお亡くなりになっていることも何度もありました。
わたしの目の前で脳梗塞になり、意識が遠のき失禁する利用者さんも間近で見ました。
手を握っても握り返してはくれなかったです。
その方はとても頑固な車いすのおじいさんでした。
すでに前回の脳梗塞の後遺症で半身不随でした。
とてもせっかちで、でも自分のできることは自分でやる。わたしたちの手を借りるのは、たとえばトイレで用を足した後のズボンをあげて欲しいということくらいでした。
お風呂はもちろん介助しましたが、とにかく脇や口やいろんなところを上手に利用して器用にいろんなことをされてました。
かなりの努力があったのだろうと、素人目にも思えました。
わたしは利用者さんのお昼ごはんのときに出勤だったのですが、出勤するとみなさんと挨拶して様子を見たりしました。
その方はいつもすでに食事を終えて、フロア内の真ん中にあるテレビを観ていましたが、わたしの挨拶にも必ず笑顔で答えてくださいました。
その日は、いつも「こんにちは!」と挨拶していたのですが、「おはよう!」と言われたのです。また、テレビではなく自室へ入る移動をしていました。
いつもと違うなぁ…とは思いましたが、そこまで深く考えませんでした。
昼食介助と服薬介助を済ませ、排泄介助をし始めたときにその方からのトイレからのコールがありました。
声をかけトイレに入り、その方がバーを持って立ち上がったのでズボンを上げ車いすへの介助をしたとたんに
「あーやばいやばい!」と叫んでそのまま…
泡を吹き始めたので他のスタッフを呼びました。
その方は1週間後に運ばれた病院でお亡くなりになりました。
家族とも縁を切っていたので、お葬式もなく家財もNPOが引き取りました。
わたしの介護のお仕事の中で、とても衝撃的な出来事でした。
いつもと違う行動をされたことを、わたしは軽く見ていたのかもしれません。ただ、兆候はなかったように思います。
食事の量・排尿排泄・睡眠など、見てわかることもあるかとは思いますが、この方のいつもと違う感じはあのときのわたしにだけわかったことでした。
まだ介護士経験も未熟で、やっとお一人お一人とゆっくり接する時間ができ、業務にもゆとりが出来てきた時でした。
わたしにだけ向けられたサインだったのでしょうか…
ちょっとだけ父に似た方でした。
介護士の在り方
1年ほどしか経験しなかった介護士ですが、やりがいもありますし楽しいです。
ただもっと寄り添ってあげて欲しいです。
人員不足もわかりますし、業務も多いです。お給料も見合ってないです、正直。
わたしは技術面でも知識としてもぜんぜんです。業務としてはすぐに何でもできる人はいません。
ですが、利用者さんに寄り添うことは誰にでもできます!
利用者さんが自分の身内だったら、どういう態度で接しますか?
どのような態度だったら喜びますか?
どのようにしたら利用者さんのご家族は安心しますか?
わたしの中で、技術や経験・知識も大事ですが一番大事なことは気持ちだと思います。
そして、わたし以上に利用者さんに寄り添う介護士はたくさんいるのですが、どうしても長く務めることができません。
それは、心の問題とスタッフ間の人間関係にあると思います。
人の死を間近で見るのは、どうしても心が傷つきます。
上手にケアできる環境がないと続けられません。
そして、このように傷つく介護士はとても大切にしてほしいです。
(なんとも思わない介護士が長く続けているわけではないです)
精神的にも辛く体力的にもキツい介護のお仕事。
スタッフはチームです。仲間です。
もっとお互いを労わり合って欲しいです。
いっしょに陰口を言うのではなく、いっしょに喜んだり楽しんだりして欲しいです。
利用者さんも、そのご家族もみなさん介護士にはとても感謝しています。
その気持ちにこたえてあげて欲しいです。
(すべての介護士が酷いわけではありません)
まとめ
介護士に就く人は少ないです。
信念をもって就く人はとても尊敬します!
ただし一部の人は、転職・再就職が難しいから就職しやすい介護士に就いたという人がいるのです。
介護のお仕事も人の生死にかかわる大切なお仕事です。
人を喜ばせたり、役に立ちたいと思う方にはとても楽しい職業です。
人生の大先輩であるお年寄りが、最期まで笑顔でいられる手助けのできる介護士は「究極の接客業」と言えるのではないでしょうか!
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